文化

日本の職人魂が世界に送り出す
音楽の殿堂

札幌コンサートホール Kitara

 

 札幌市の中心部から少し南に位置する中島公園内にある札幌コンサートホールKitara。クラシック音楽を中心としたコンサートなどが行われ、客席数2,008席を誇る道内最大の音楽専用ホールである。北海道の特徴を活かして設計されたKitaraは、一歩踏み入れると北の大地の温かみや自然の雄大さを存分に感じられる。明るく広いホワイエや、緩やかなカーブが内壁や通路等に施されたホールは、これから始まる音楽の饗宴を予感させ、適度な緊張感とお客様の期待感を前奏曲のように感じとることができる。地下鉄駅を出てKitaraに向かう約7分間の道すがら、これから演奏される曲についての会話、公園の木々、大きな池が織りなす風景などが、聴衆の心をワクワクさせるひとつの舞台装置の役割も果たしている。国内外の一流オーケストラの演奏会や大ホールにあるフランス製のパイプオルガンのコンサートなどが開かるKitaraは、音楽の魅力を最大限に感じられる場所である。
 Kitaraの設計を担当した建築家の一人、地元北海道の株式会社ドーコンの木下 孝氏は、「いつか最高のコンサートホールを手がけたい」と思っていた。Kitaraの建築にあたっては、その情熱や職人としてのこだわりを惜しまずそそぎ込んだ。例えば、ドアの取っ手や手すりは、ホールの雰囲気に合わせて、ひとつひとつ艶消しに仕上げ、天井には大きなコンクリートパネルを採用した。このコンクリートパネルは最高の音を作り出すためには極めて重要なパーツであるが、その荷重があまりにも大きく、一般的にはコンサートホールの設計では使用されない建材である。しかし、最高のホールを作りたいという木下氏の意思のもと、大きな地震でも重さを支えられる設計や建築方法を駆使することで、理想的な空間を作り出すことに成功した。このことにより、西洋の大聖堂や大きな石造建築で感じられる音のように、クラシック音楽本来の音の響きを感じられる設計となっている。また、舞台の上には演奏者が作り出した繊細な音色を客席の隅々まで運んでくれる巨大な反射板が設置されている。一方、北海道の大自然をモチーフにした緩やかなカーブの壁面や客席は、ホールを美しく魅せるだけではなく、巨大な音響装置として緻密に計算されている丸みであり、どの席でも素晴らしい音響でコンサートを楽しむことができる。ホールの主役である舞台は檜で作られているが、檜は加工が難しく高価な木材である。しかし、全体を檜で仕上げたことにより、演奏者が作り出した音の饗宴を優しく空中に持ち上げ、互いの音色を邪魔することなく調和させてくれる。実際にKitaraのホールでコンサートを聴くと、時には強く時には優しく飛んでくる音色を感じることができるだろう。音へのこだわりだけではなく、もう一つ隠された仕掛けがある。それは、舞台の後ろに設置されている縦型模様の壁である。通常であれば均一の縦幅で作るところだが、遠くから見ると波のよう滲んで見える「モアレ現象」が生じる。これを防ぐために、木下氏はあえて縦幅の間隔を不均等にした。このことにより聴衆は目が疲れることなく木のぬくもりに癒され、コンサートに集中することができる。ほかにも演奏者の圧迫感を和らげるため、椅子と椅子の間隔を変えて設置された客席、人による音の吸収を想定して作った客席の形や素材まで、あらゆるところに木下氏のこだわりが染み込んでいる。これこそが、札幌が世界に誇るKitaraであり、芸術と職人精神のアンサンブルを体験できる場所である。ぜひ一度訪れてみては。

* 住所 : 札幌市中央区中島公園1番15号
   電話 : 011-520-2000
   HP : http://www.kitara-sapporo.or.jp