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自然

札幌の景色を独り占め。

もいわ山ロープウェイ

 

 札幌中心部から車で西に向かうこと20分。そこには531メートルの少々背の小さな山だが、国の天然記念物として指定されるほど自然豊かな藻岩山がある。こちらには約450種の野草が生息しているとされており、季節によって美しい変化を見せる場所だ。特に秋には藻岩山だけでなく、周辺の山にまでかかった赤と黄色紅葉が着物の絹のように広がる。札幌は紅葉が終わる前に雪が降ることが多く、その時期の色染まった紅葉の上に添えられた白い雪景色は美し過ぎて息を吐くことすら忘れてしまう程だ。また、その中で生活する小さな動物達も目にすることができる。藻岩山のキャラクターである「もーりす」は藻岩山の「も」と、この山でよく見かけることができるリスを合わせたものであり、可愛らしい姿で人気を集めている。

 藻岩山は北海道の先住民族であるアイヌ人から『インカルシペ(いつもそこに上がって見張りをするところ)』といわれていた。その名の通り、下から山を見上げるだけでも眺めが良さそうだ。この地で長い時間を生きて来たアイヌ人達がこのような名前をつけるほどのものが、この山にはあるのだろう。そこへ行けばきっと美しい札幌の景色が広がるはずだ。

 期待を込めて藻岩山の山頂駅まで登ってみることにしよう。藻岩山は3つの方法で登ることができる。歩いて登るか、ロープウェイを利用するか、車を使って有料の観光道路を通って登る方法だ。

 歩いて登るのは、いわゆる山登りに近い形だ。あまり高いとはいえない山だが、頂上までは1時間ほどで登れるようだ。しかし、雪の季節ではこの方法はあまりおすすめできない。標高は高くないが、雪山を登るにはある程度の覚悟や装備、専門知識などが必要とされるためだ。一般的にはロープウェイを利用するだろう。5分程で中腹まで登れる。搭乗を待つロビーも居心地よく、ロープウェイの客車からも非常に視界がよくて、開放的な気分を満喫できる。山頂に向かうと、身体が宙に浮くような心持ちだ。一旦中腹駅に着いてからは「もーりすカー」に乗り換えて山頂駅まで登る。もーりすカーは地上を走るケーブルカーだ。可愛いドングリのような形をしている緑色の車両が二台繋がっていて、一気に頂上に向かう。山頂にある展望台では、360度広大な風景が広がる。札幌市内はもちろん、左側には石狩湾の海が、右側には定山渓がある森林も見える。昼間の景色も大変綺麗なものだが、藻岩山は夜景で有名な場所である。神戸、長崎と共に日本新三大夜景に選ばれた札幌市の夜景を一番綺麗に見られる場所だ。夜空の星を全て地面に下ろしたような街の光。どこかの美味しい夕食の時間放たれる光も、ナトリウムランプで統一された札幌市の道路の照明も、それぞれの輝きが美しいハーモニーを作り出す。楽しい一日のクライマックスになるに違いない。実はこの夜景をさらに感動的に楽しめる方法がある。それは、ロープウェイを利用せず、車を使い、観光道路を通り中腹まで登ることだ。ロープウェイを使うと最初からじわじわと夜景を見てしまう。それは、展望台に登っても最初から見てきた夜景の完成版であるが、圧倒する何かは少ないかもしれない。しかし、車で登ると夜景がほとんど見られないこ

とで、展望台に登って振り向いた瞬間の感動は驚くほどだろう。しかし、冬の間は積雪の影響で観光道路が閉鎖されるので事前に確認が必要である。

 展望台の二階には夜景と共に食事などを楽しめるレストラン「THE JEWELS」が併設されている。フレンチや創作料理をメインとするこちらは夜景がよく見えるよう設計されている。料理のレベルもよくあるような そこそこの味で値段が高い観光のレストランとは違い、北海道の特徴を生かした絶品料理を提供している。しかし、夜景に目を取られてしまうことは多少は仕方のないことかもしれない。

 静かに自然の中に佇み、極上の瞬間を味わうことができる藻岩山。何度も記憶の辞書から探しだして繰り返し思い出してみたいところ。夜のひと時を最高の瞬間に変身させる藻岩山に足をぜひ運んでほしい。

* 住所:札幌市中央区伏見5丁目3番7号/ 電話番号 : 011-561-8177

   HP : http://www.moiwa.sapporo-dc.co.jp/

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